来年の冬に札幌へ、いずれはエジプトへ。そう考えたときに、まず決めなければならなかったのが「どのリュックで行くか」でした。
条件は3つ。どの航空会社でも機内に持ち込めること、荷物込みで6kg台に収まること、そして長時間背負っても腰と股関節に響かないこと。
軽く調べればすぐ決まるだろうと思っていたのですが、これが甘かった。調べれば調べるほど「それ、どこにも書いてないよね」という落とし穴が出てきて、結局1ヶ月かけて5製品を比較し、店頭で実際に背負い比べることになりました。
この記事では、その過程で分かったことを全部書きます。同じように「重い荷物を背負うのが不安」という方の参考になれば嬉しいです。
※持ち込みの規定は変更されることがあります。搭乗前には必ず、ご利用の航空会社の公式サイトでご確認ください。
そもそも「何リットルまで」という質問が間違いだった
最初、私は「機内持ち込みリュックって何リットルまでOK?」と検索していました。
でもこれ、答えが出ない質問なんです。航空会社が決めているのはリットルではなく、3辺の長さと重さだから。同じ30Lでも、縦長の登山ザックと横長の旅行リュックでは、規定に通るかどうかが変わります。
正しい調べ方は「高さ×幅×奥行きが何cmまでか」。ここを間違えると、いつまでも答えにたどり着けません。
落とし穴①「3辺合計115cm以内」だけでは足りない
国内大手(ANA、スカイマークなど)の基準は、3辺合計115cm以内・55×40×25cm以内・身の回り品と合わせて10kg以内。ここまでは、どのサイトにも書いてあります。
問題は、会社ごとに各辺の個別の上限が違うことです。
| 航空会社 | 個別の上限 | 重量(身の回り品込み) |
|---|---|---|
| ANA・スカイマーク(座席100席以上) | 55×40×25cm | 10kg |
| ANA(座席100席未満の小型機) | 45×35×20cm | 10kg |
| ジェットスター | 56×36×23cm | 7kg |
| チェジュ航空・ティーウェイ航空 | 55×40×20cm | 10kg |
つまり、3辺合計115cm以内に収まっていても、奥行きが25cmあるリュックはジェットスターでも韓国系でもアウトになり得るということ。
ここから導いた私の結論は、「高さ55cm × 幅35cm × 奥行き20cm以内で揃えておけば、主要な路線はカバーできる」というものでした。以降、この数字を絶対条件にして候補を絞りました。
ただし例外があります。ANAの小型機材(プロペラ機など、地方路線で使われることがあります)は45×35×20cmとさらに小さく、高さ55cmのリュックは規定を超えます。乗る機材が分かっている場合は、事前に確認しておくと安心です。
落とし穴②「7kg」と「10kg」は、会社によって違う
サイズ以上に効いてくるのが重量制限です。ここで私が最初に誤解していたのが、「LCCはどこも7kg」だと思い込んでいたことでした。
実際に調べてみると、そうではありませんでした。
- ANA・スカイマークなど国内大手:10kg
- ジェットスター:7kg
- チェジュ航空・ティーウェイ航空(韓国系):10kg
同じLCCでも、7kgのところと10kgのところがあります。「LCCだから7kg」と決めつけず、乗る会社ごとに調べるのが正解でした。
そして共通して大事なのが、この重量はメインのバッグと身の回り品の合計だということ。財布やスマホ、飲み物まで含まれます。近年は自動計測機を導入する空港も増えていて、以前より厳しくチェックされる傾向があるようです。
さらに重要なのが、リュック本体の重さもこの中に含まれるという点。本体1.4kgのリュックを選んだ時点で、7kg制限なら中身に使えるのは5.6kgしかありません。この視点を持ってから、候補の見え方がガラッと変わりました。
落とし穴③ 圧縮機能は「かさ」を減らすが「重さ」は減らさない
検討中、圧縮機能を内蔵したリュック「HOLICC ONE」が気になりました。ファスナーを締めるだけで衣類が半分ほどの嵩になるという、なかなか魅力的な製品です。
でも冷静に考えて、やめました。理由はシンプルです。
私の制約は「重さ」であって「容量」ではなかったから。
現地で洗濯する前提なら、衣類は3セットもあれば足ります。そもそも30Lを使い切りません。容量が足りなくて困る場面が来ないのに、圧縮機能のために本体重量が1.4kgになるのは本末転倒でした。
圧縮は、かさばる荷物をたくさん持っていく人のための機能です。荷物を減らす方向の人には効きません。 ここを取り違えると、重くて高い買い物になります。
逆に言えば、「荷物は多いけれど、なんとか機内に収めたい」という方には、こういう製品が合うのだと思います。合う・合わないは、その人の制約がどちらにあるか次第です。
では、圧縮そのものが要らないのかというと、そうではありません。冬の札幌のように厚手の衣類が増える旅では、かさを減らしたい場面が出てきます。
でもそれは、年に何度もない場面です。そのために本体を1.4kgにするのは割に合いません。必要なときだけ、手持ちの圧縮袋(我が家にあるのは無印良品のMサイズ1枚です)を入れればいい。袋なら数十グラムですし、要らない旅では置いていけます。
つまり圧縮は、いつも使う機能ではなく、冬物のときだけ足すもの。そう位置づけたら、すっきりしました。
そして気づいたのですが、これは腰ベルトとちょうど逆でした。腰ベルトは後から足せないから、付いているものを選ぶ。圧縮は後から足せるから、内蔵していなくていい。
「あると便利そう」で選ぶのではなく、後から足せるかどうかで決める。この基準にしてから、迷いがなくなりました。
なお、圧縮しても軽くなるわけではないので、重量制限とは別の話として考えています。
比較した5製品
最終的に、この5つを比較しました。
| 製品 | 容量 | 重量 | 価格の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| コールマン ウォーカースクエア | 30L | 約600g | 9,900円 | とにかく軽い・安い |
| tomtoc Navigator T66 Liteway | 28L | 約950g | 9,990円 | フルオープン+キャリーオン対応 |
| モンベル トライパック30 | 30L | 約907g | 18,700円 | フルオープン+3WAY+修理体制 |
| ノースフェイス ビッグショット | 33L | 約1,000g | 23,980円 | 腰ベルトあり・背面構造が本格的 |
| HOLICC ONE | 28L | 約1,400g | 28,000円 | 圧縮機能を内蔵。その分 |
※価格・仕様は執筆時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
落とし穴④ ブランドによって「正しい買い方」が違います
これは調べていて驚いた話です。
モンベルの公式サイトで18,700円だった製品が、あるモール型の通販サイトでは34,980円で出ていました。値上げかと思ったのですが、公式の価格は変わっていません。
調べてみると、モンベルは公式直販と直営店・正規取扱店を基本にしているブランドでした。公式が値引きセールをほとんどしない代わりに、定価が良心的という価格方針です。
理由がどうであれ、同じ商品が公式の倍近い価格で出ていることがあるのは事実です。ポイント還元を考慮しても、割に合いません。
ここから得た教訓は、「通販モールで相場より明らかに高い出品を見かけたら、買う前に公式サイトの価格を確認する」ということ。ブランドによって、いちばん安く確実に買える場所は違います。
店頭で背負って分かった、スペック表に載っていないこと
ここからが本題です。カタログでは絶対に分からないことがありました。
手に持った重さと、背負った重さは別物
モンベルのトライパック30を手に持ったとき、正直「重い」と思いました。ところが背負ってみると、まったく気になりません。ハーネスが荷重を分散していれば、900g程度は背中では感じないんです。
手に持った印象だけで候補を切っていたら、判断を誤るところでした。
空の状態で試しても意味がない
最初、店頭で空のリュックを背負って比べていたのですが、これがほとんど参考になりませんでした。荷物が入って初めて、背中への密着感や重心の高さの差が出ます。
登山用品を扱う店なら重り袋を用意していることも多いので、「6kgくらいで背負ってみたいのですが」と聞いてみる価値はあります。用意がなければ、店内の飲料コーナーで2Lの水を3本カゴに入れて持ち込むのでも十分です(もちろん一声かけてから)。
買ってから後悔するより、試してもらったほうがお店にとってもいいはず、と自分に言い聞かせました。
3製品を背負い比べて感じたこと(あくまで個人の体感です)
- モンベル トライパック30:背負った瞬間は快適。ただし背負い続けると関節に来そうな予感がありました
- コールマン ウォーカースクエア:背中の当たりが一番心地よい。ただし荷物を増やしたときが未知数
- ノースフェイス ビッグショット:重いけれど、腰まわりの安定感が明らかに違う
落とし穴⑤ 腰ベルトは負担を「消す」のではなく「移す」
これが今回、一番の発見でした。
ノースフェイスの腰ベルトを骨盤の出っ張りに乗せて締め直したところ、腰は明らかに楽になりました。ところが今度は、股関節に少しだけ負荷を感じるようになったんです。

最初は「合わないのかな」と思ったのですが、よく考えれば当然でした。
腰ベルトは、荷重を肩と背中から骨盤に移す装置です。負担をゼロにするのではなく、どこで受けるかを選び替えているだけ。
これが分かってから、見え方が変わりました。腰ベルトの本当の価値は「楽になること」ではなく、負担の置き場所を自分で選べることにあります。
- しっかり締める → 腰が楽、骨盤側で受ける
- 7〜8割の締め具合 → 肩と骨盤で分担
- 緩める・外す → 肩と背中で受ける
歩いている途中で、腰が疲れたら締める、股関節が気になったら緩める。この切り替えができるかどうかが、長時間歩く旅では効いてきます。
腰ベルトのないリュックは、荷重の逃がし場所がありません。しかも後から足すことはできない。逆に、付いているものを使わない選択はいつでもできます。
「調整できる問題」と「調整できない問題」なら、前者を選ぶ。 これが私の結論でした。
※ここに書いたのはすべて私個人の体感です。体の状態には個人差がありますので、不安のある方は主治医や専門家にご相談ください。
ボトルと身の回り品をどうするか
もう一点、意外と悩んだのが「飲み物をどこに入れるか」です。
出し入れしやすいようにウエストポーチを、と考えたのですが、これは避けました。ウエストポーチはリュックの腰ベルトとまったく同じ位置に来るので、両方は使えないからです。せっかくの腰ベルトが死んでしまいます。
斜めがけバッグも、背中や脇に回したままだと片側の肩に荷重が集中し、体が傾いて左右差につながります。前に回して胸の位置で使えば荷重が体の中心に近づき、これはスリ対策としても有効な位置です。
そして重要なのが、重いボトルは身の回り品ではなくリュックに入れること。500mlのボトルを斜めがけに入れると、片側だけに500g以上がぶら下がって揺れます。身の回り品は貴重品だけの軽い運用にして、重いものはハーネスのあるリュック側へ。役割を分けるのが正解でした。
ちなみにボトル自体の重さも盲点で、ステンレスのマイボトルは300mlクラスでも本体200g前後あります。ペットボトルの容器は約20g。「300mlマイボトル」と「500mlペットボトル」がほぼ同じ重量で、飲める量は後者が1.7倍。重量を突き詰めるなら、ペットボトルか折りたたみのソフトボトルに軍配が上がります。
最終的に選んだもの
ノースフェイス ビッグショット(33L) にしました。
決め手を順に挙げると、
- 腰ベルトがある(負担の置き場所を選べる)
- サイズが55×35×20cm以内に収まる(主要な路線に対応できる)
- 不人気色がセール価格だった(定価23,980円のところ、対象カラーは30%オフの16,786円でした)
- 見た目が好みだった
4つ目を最後に書きましたが、これは本気で大事だと思っています。気に入ったものは自然と使う機会が増えるし、旅先の写真にも写るものですから。
色はスレートグレー(青みのグレー)を選びました。手持ちのコートがくすんだセージグリーン、マフラーがオフホワイト、スノーシューズがグレー。リュックはコートの上から背負うので、隣り合うのではなく重なるんですよね。だから濃い緑を選ぶと「違う緑が2つ」になってしまう。青みグレーなら、セージともネイビーもベージュとも喧嘩しません。
リュックの色は、顔まわりの色ではなくアウターと重なる色として選ぶ。 これも今回の学びでした。

まとめ
同じように悩んでいる方のために、要点をまとめておきます。
- リットルではなく、高さ×幅×奥行きで確認する
- 55×35×20cm以内なら、主要な路線はカバーできる(小型機は例外あり)
- 重量制限は会社ごとに違う。「LCCだから7kg」と決めつけない
- 重量にはリュック本体の重さも含まれる
- 圧縮機能は「かさ」を減らすもの。重さは減らない
- 機能は「あると便利そう」ではなく、後から足せるかどうかで判断する(腰ベルトは足せない=内蔵を選ぶ/圧縮は袋で足せる=内蔵不要)
- 通販モールで高い出品を見たら、公式サイトの価格を確認する
- 店頭では必ず荷物を入れて、歩いて比べる
- 腰ベルトは負担を消すのではなく移す。調整できることが価値
- 重いボトルは身の回り品ではなくリュック側へ
- 色はアウターと重なったときを想像して選ぶ
次回は、実際に旅行で使ってみた【実践編】を書く予定です。パッキングの中身と、長時間背負ったときの本音をレポートします。


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